いきなり、きらびやかなクラゲの大群……おーッ。
と、思いきや海中では、地上を捨てたフジモトが“生命の水”をスポイトで1滴2滴と垂らす姿。
プランクトンが生まれ、クラゲは海面へと……。
そんなフジモトとは裏腹(ウラハラ)に、地上に興味を抱くポニョ(フジモトの娘で魚)は、海面に出てしばらくすると嫌な予感が……底曳網の漁船に捕らえられたのだ。
網の中は、魚より空き缶や傘、はたまた車のタイヤなどゴミばかりである。
おもわず“驚き桃の木山椒の木”どっきどき。
なんとか漁船の網から脱出したポニョだったが、ガラス瓶の中にスッポリはまり、身動きができない状態なのだ。
そんなポニョを助けたのが、海辺の崖の上に家がある5歳の宗介だった。
それからのポニョと宗介は、相思相愛の中に。
魚と人間……果たしてどういう展開が待っているのか。
どひぇー……。
原作・脚本・監督 : 宮崎駿
公開日 : 2008年7月19日
それでは、名言を見ながら考察をしていきましょう。
宗介の名言7選
- 大丈夫だよ。ぼくがまもってあげるからね
リサがポニョについて「ああ、それ保育園に持って行くの!?」、「先生、だめって言わない?」と、宗介に問いかけたときの返答。
5歳とは思えない大人の会話だよね。
男らしさが出ていて、カッコいい。 - リサ!この子は、ポニョっていうんだよ
宗介が名付け親。
ポニョとしているから。
単純明快。
ところで宗介は、母親のことを「リサ」と呼び捨てにしているが、なぜ?
親子の上下関係より、人間としての対等関係を貫いている家族。 - ここにバケツをおいとおけば、ポニョがきた時この家ってわかるよね
ポニョを入れていたバケツを家の柵にかけたときの言葉。
宗介はポニョを失ったことが、諦めきれない。 - リサ、泣かないの。ぼくも泣かないから…...
愛する夫・耕一が、急遽、帰れなくなりショックを受けるリサに、頭をなでながら発した宗介の言葉。
宗介もポニョを守ってあげると約束したのに、フジモトの手下・水魚にさらわれて悲しいはず。
なのに、相手を思いやる余裕、本当に大人対応。
カッコいい。 - ポニョだ……リサ、ポニョがおんなの子になって戻ってきた !!
さぁーたいへん、魚だったポニョが人間になって宗介の前に現れたのだ。
宗介は感激の驚き。
リサは、何が何だか分からない驚き。
ポニョは「宗介んとこ来た!」と、うれしさを妹たちに報告。
「いやぁー、今日は盆と正月が一緒だね」の二人と「今日は何の日」のリサかな。 - クミコちゃん、忙しいからあとでねェー
宗介がポンポン船に乗ってリサを探しているとき、避難中のクミコちゃんに声をかけられたときの返答。
自立している大人の言葉だよね。
いいねー。
それから船に乗っている宗介の姿は、船長帽をしっかりとかぶり双眼鏡を首から下げ、船長になりきっている。
耕一の影響か、頼もしい。
「ひまわりの家」のディケアセンターに通う、よしえさんに声かけられとときも、「よしえさん、いまいそがしいんで、あとでね」と言っている。
「いまいそがしいんで」なんて大人の常套句。
これも耕一から教わったのかな? - ぼくおさかなのポニョも、半魚人のポニョも、人間のポニョも、みんな好きだよ
ポニョの母・グランマンマーレに「あなたはポニョがおさかなだったのを知ってますか?」や「ポニョの正体が半魚人でもいいですか?」などと質問されての返答。
これでポニョは人間になり、魔法が使えなくなるため、地球は救われる。
宗介の言葉がいかに重要だったか、フジモトをはじめ、おばあちゃんたちはハラハラドキドキ。
宗介は、ただ、たんたんと気持ちを伝えただけなんだけどね。
この重大さを知らないのは宗介とポニョだけ。
まぁ、しょうがないか。
「愛は永遠だもんねー」。
ポニョの名言4選
- ポニョ、そーすけ、スキ
ポニョが初めて「そーすけ」と人間の言葉を話した直後の名言。
宗介、ビックリ。 - ポニョ、宗介スキ。ポニョ、人間になる!
フジモトがポニョをやっとのことで宗介から取りかえしたのに、魚のポニョは、人間を捨てた父に驚きの言葉を言い放ったのだ。
ポニョの頭の中は、宗介だけ、フジモトの話は、うわの空。 - 海スレスレになってる……
嵐の翌朝、窓を開けたときの言葉。
海水が崖の上まで上がってきたのだ。
“ひまわりの家”は海の中にスッポリと。
ポニョの魔法で海が津波のように荒れ狂ったのだ。
えッ、自然の激怒で日本列島が海の中にスッポリと、ダメダメ、クワバラクワバラ。 - おめめから水でてる
宗介が涙を流しているのに、ポニョは涙がどういうものか、まだ分かってない。
強風雨のなか、“ひまわりの家”に向かったはずのリサカーが道路上に置いてきぼり。
宗介はリサを必死に捜すが見つからず、思わず悲しくなり涙が。
いくら大人びた宗介であっても、まだ5歳の少年。
不安が、つのり涙するのは当然。
リサの名言4選
- なによ、あの不気味男!なんていっちゃだめよ宗介、人は見かけじゃないんだからね
リサがポニョの父・フジモトに対しての言葉。
リサは、とっさに本心を言ってしまったが、子供の前ではまずいと思い、すかさずつくろったのだ。
しかし宗介は、なんのことやら。
ポニョの方が気になる。 - 宗介さ、運命っていうのがあるんだよ
フジモトの手下・水魚にポニョをさらわれた帰り道、リサが泣きっ面でソフトクリームをなめている、宗介への言葉。
まだ、続きが「ポニョは海で生きるように生まれたから、海に戻ったんだと思うな」と。
でも納得できない宗介。 - そうやって崖の上に女房と子どもをほおり出しておけばいいでしょう!
耕一の帰りを楽しみにしていたリサは、帰れなくなったという電話に激怒。
それで電話を切る前の捨て台詞なのだ。ゴンリサは耕一のことが好きですきで、たまらないんですね宮崎監督の作品に登場する『紅の豚』の主人公ポルコも女性をほっぽり出して仕事に専念。
耕一の姿を見ている宗介も「いま、いそしいからあとでね」と「男は女より仕事」という場面が何ヶ所か出てくる。
「女性は船乗りに惚れてはいけないのかな?」 - 宗介ね、いま、この家はあらしのなかの灯台なの
暗闇の中の灯台は、無線が通じない場合、針路の役割をしてくれる。
まさに崖の上の宗介の家は、灯台なのだ。
さすがリサ、冷静。
耕一の名言1選
- 宗介だ!あいつは天才だ。まだ5歳だぞ
宗介が耕一からの発光信号を読みとり、反対に耕一へ発信したときの言葉。
また、宗介の船員帽をかぶり双眼鏡をのぞく姿は、将来の船長だね。
耕一の背中から学んだのか。
トキさんの名言1選
- オーいやだ、人面魚じゃないか、はやく海に戻しとくれ、津波を呼ぶよ
宗介がバケツの中のポニョを見せたときの言葉。
人面魚が浜に上がると津波が来るという昔からの言い伝え。
トキさんは物事をはっきり言うタイプで、少し冷たく感じるときもあるが、信用できる人。
おばあちゃん一同の名言1選
- わたしたちみんな宗介ちゃんとポニョの味方だからね
おばあちゃんたちが、リサに励ましの言葉をプレゼント。
また、ポニョについて、グランマンマーレと宗介のやりとりは、おばあちゃんたちが生き証人。
のちに、宗介が「ぼくおさかなのポニョも、半魚人のポニョも、人間のポニョも、みんな好きだよ」なんて言ってないと反論してもダメ。
グランマンマーレの名言2選
- ねぇあなた、ポニョを人間にしてしまえばいいのよ
グランマンマーレが、フジモトに大胆な提案をしたときの言葉。
ポニョは魔法を使い放題で、地球の破滅がカウントダウン。
ポニョは人間になると魔法は使えなくなる。
フジモトは人間が大嫌いだが、ほかに策なしか。 - みなさん、世界のほころびはとじられました
宗介がポニョを人間として受け入れることを了承したため、グランマンマーレがおばあちゃんたちに宣言。
ポニョと宗介、良い関係の自然と人間の共生が始まる。
今までは、人間が自然を破壊、自然は災害をと、悪い関係だった。
さあーて、これからの未来は…..乞うご期待を。
フジモトの名言2選
- きみしか世界はすくえないんだ。乱暴はしたくない
フジモトが宗介に懇願しているときの言葉。
重力場(引力が働いている場所)崩壊により、月が地球に迫ってきている。
これを止めるには、ポニョの魔法を使えなくさせるしかないのだ。
つまり、ポニョを人間にするしかないということ。
なので、宗介にポニョを受け入れてもらうしかない。
そんな一大事(イチダイジ)とは、いざ知らずの宗介。
果たして結末は……。 - ポニョをよろしく頼む……
フジモトが宗介との別れのときに、握手を交わしながらお願いした言葉。
海を汚す人間に絶望し、海の生命たちと共に生きる決意をしたフジモトは、ポニョが人間になるなんて勿論、反対だったはず。
しかし、地球を救うためには、やむなし。
そして、フジモトは自然(ポニョ)と人間の共生を宗介に託したのでは。
宗介、ファイト!
あとがき
宮崎監督いわく「人というものはこういうものだ」ってふうな描き方じゃなくて、「こうあったらいいなあ」っていう方向で映画を作っています、と。(『風の帰る場所』参考)
宮崎駿監督は耕一であり、フジモトでもあるように感じる。
男は、外で仕事している姿がカッコいいんじゃないかな、耕一みたいに。
楽しいことは良しとしても、不愉快なことまで家に持ち込まれたら、家族は、たまらないでしょう。
リサを見れば分かる、楽しそう。
また、フジモトは海を汚す人間に絶望するものの、“生命の水”を作り続け海の復活を願っていた。
宮崎監督は、自然を破壊する人間に怒りを覚え、アニメという形で訴えている。
それは大人だけでなく子供にも「現実はこうなんだからね」と。
そして、最後にビックニュース。
実は、本作の企画で思わぬエピソードが……。
それは、宮崎監督が鈴木敏夫氏に対し「鈴木さん、一生のお願いがある。保育園の話を映画で作るより、本物の保育園を作りたい」と言い出したんだよね(笑)。(ロマンアルバム『崖の上のポニョ』参考)
さぁー、たいへん。
でも鈴木氏は、宮崎監督の一生のお願いを実現したんだよね。
スタジオジブリの隣に、“三匹の熊の家”をスタッフ専用保育園として完成。
開園は、2008年4月1日。
屋根には、親子らしき三匹の熊が……。
映画では5歳の宗介とポニョに未来を託しているが、現実では「“三匹の熊の家”の子供たちにバトンを渡せればなぁ」と願っているみたい。
生まれてきてよかった。
それでは、さよならサヨナラ