映画

諏訪敦彦監督『風の電話』天国につながる電話 場所はどこ?

風の電話

 

岩手・大槌町に実在する「風の電話」
天国に繋(ツナ)がる電話」という噂が人々に広がり、2011年3月11日・東日本大震災以降、3万人が訪れているという。

17歳の高校生ハル(モトーラ世理奈)は、8年前の震災で両親と弟を亡くし広島に住む叔母・広子(渡辺真紀子)の家に身を寄せていた。

そんなハルを広子は、連休に大槌へ帰ろうと誘ってみた。
なのに、ハルが学校から帰ると広子は台所で倒れていたのだ。

意識不明で入院

ハルは焦燥に駆られ自暴自棄になるのだが、公平(三浦友和)に助けられ、1人人で大槌へ行く決心を。

監督は『ライオンは今夜死ぬ』『不完全なふたり』など、フランスで活動している諏訪敦彦
久しぶりの日本ロケ、広島から岩手までのロードムービー。




東日本大震災は死者15,897人、行方不明2,532人

ゴン
ゴン
ハルのように震災で家族を亡くし、1人だけ残された人はどのくらいいるのだろうか?


コロナ患者も然り。
毎日、死者何人、感染者何人と発表を、してはいるけれど……

ハルは行く先々で心に悩みを抱えた人たちに出会い、悩みの大きさこそ違うが生きる大切さを知るようになる。

叔母の広子とは、登校するときにハグを習慣化していた

公平は妹が自殺をし、父も死に、母は認知症が始まっている
妻と子供は家から出て行ってしまった。
近所は豪雨による山崩れで、家が流され、たまたま自分の家だけが残ったという。
公平は言う生きるちゅうのはたまたまかもしれないな」と。
公平の母は、広島の原爆で被害にあった家族の骨壷を見たという。
壺の中には学生ボタンが1つだけだったと。

ヒッチハイクをしていたハルは、姉弟の運転する車に拾われた。
妊婦の姉、友香(山本未来)は、ハルに「夫はいないけど赤ちゃんは産む」という。

森尾(西島秀俊)は、若い男たちに絡まれていたハルを助け「なあハル、お前が死んだら誰がお前の家族のことを思い出すんだよ誰もいなくなちゃうだろう」と。

森尾は福島の原発で働いていたが、今は車の中での寝泊まり、放浪生活である。
妻と子供は、震災で亡くしていた

そして森尾は、福島でボランティアをしていたクルド人に会うため、埼玉に立ち寄ることに。
しかし知り合いのクルド人は、入管収容施設入れられていて、いつ出てくるか分からなかった。

川口や蕨には、クルド人が約1,200人いるらしい。

不法滞在などの外国人を収容する入館収容施設は、無期限で身柄を拘束するなど人権を守らない場合があるという。
精神を病み自殺を図る人もいるらしい。

また、福島に帰郷した今田(西田敏行)は、生まれた所で死にたいという。
原発事故で神奈川に避難した今田の知人は、子供が学校でいじめの対象になっているという。
「放射能はうつらないのですか」と転校生に子供が質問したらしい。

ゴン
ゴン
なぜ立場の弱い人をいじめるのか、信じられない

gon
gon
コロナ禍でもそうである

コロナと言えば昨年の2020年7月5日時点でコロナ感染者累計が、東京6,765人をはじめ全国で19,766人となった。
そんな中、岩手県だけが何と0人だったのだ。
アメリカのメディアでも0人の凄さが紹介されていた。
その後Go Toトラベルのあおりもあり、さすがに感染者は確認されてしまったが。

gon
gon
人間だれしも感染者の多い所に、好んで旅行はしないでしょう

岩手県が感染者0行進を続けていた当時、達増知事と記者が心温まる質疑応答をしていたので紹介したい

「感染者第1号のプレッシャーに対してはどうですか」

第1号になっても県は責めません。第1号の患者さんについては、特に優しく丁寧に対処して命と健康を守るようにしたいと思います。県民の皆様に対しても陽性者患者さんに対しては、お見舞いの言葉を贈ったり、気持ちの中で良いですけど優しく接してほしいと思います

「感染者がゼロについての感想はどうですか」

東日本大震災の経験が大きいと思います。いざという時に1人ひとりが自分で考え行動することが、岩手県民の皆さんはできるようになっているんだなと感じます

ゴン
ゴン
いじめとは程遠いメッセージ、知事の人柄や県民への信頼が伝わってくる
gon
gon
県民も知事のためなら頑張ろうと思うのではないだろうか

ハルは岩手にたどり着くまでに何人もの人に助けられた。
精神的にも経済的にも。
そして、苦難をのりこえている人たちの声を聞き、生きていこうと変化してきたのだ。

ハルは土台しか残っていない実家に行き「ただいま」というが、返事はなかった。

ゴン
ゴン
分かってはいるが、両親や弟の存在を確認したかったのだろうか?

意気消沈し、駅のホームで電車を待っていると「風の電話」へ行くという少年に出会ったのだ。

少年は父を交通事故で亡くしていた

ハルは何年も家族に「会いたい」と……。
遂に「風の電話」で家族に会ったのだ。
ハルは今までの想いや近況をあふれる涙を気にすることなく話し続けた。

gon
gon
風にのって届いていることだろう

ハルは、今まで別れの挨拶を家族としていなかった
今は、はっきりと言えた。
今度は、おばあちゃんになったら会おうねと言ったのだ。

ゴン
ゴン
生きる宣言をしましたね
gon
gon
3.11は忘れないだろう。ハル(春香)に菅原道真の和歌をプレゼントしよう

風吹かば 匂ひおこせよ梅の花 あるじなしとて 春な忘れ

 

それでは、さよならサヨナラ。

付記:菅原道真の和歌(現代語訳)

(春になって)東の風が吹いたならば、その香りを(私のもとまで)送っておくれ梅の花よ。主人がいないからといって春(咲く)を忘れるなよ。

監督  :諏訪敦彦
脚本  :諏訪敦彦、狗飼恭子
出演者 :ハル(モトーラ世理奈)/森尾(西島秀俊)/公平(三浦友和)/今田(西田敏行)/広子(渡辺真紀子)/友香(山本未来)
制作年 :2020年
上映時間:139分

2020年キネマ旬報個人賞
新人女優賞:モトーラ世理奈