映画

阪本順治監督『一度も撃ってません』ヒットマン豊川悦司(笑)

一度も撃ってません

ハードボイルド作家といえば、『長いお別れ』の著者 チャンドラーが有名。
日本の作家では、大沢在昌が現役で活躍。
葉巻を吸っていた北方謙三は、なぜか歴史小説にくら替えしてしまった。

ところで、本作品の監督・阪本順治は元プロボクサー赤井英和主演の『どついたるねん』子供の人身売買、臓器密売をテーマにした『闇の子供たち』炭焼き職人・稲垣吾郎主演の『半世界』など、次からつぎへと新しい題材に挑戦し、観る人を飽きさせない。

次は監督が、さりげなくカメラの前を横切ってほしい。

ヒッチコック監督みたいに。

御前 零児(おまえれいじ[石橋蓮司])の愛称でバー「y」にかよう売れないハードボイルド作家は「午前0時」を過ぎると人が一変した。

巷では「伝説の殺し屋・サイレントキラー」と、いわれている。

そんな零児は、旧友のヤメ検・石田(岸部一徳)から殺人の依頼を受けると自分ではせず、仲間のヒットマン・今西(妻夫木聡)に頼んでいたのだ。
原稿の執筆では描写にリアルさを求め、
射殺の経過や心理状態を今西から、たびたび聞いていたのだが……。

この作品には色の重要さを感じる。

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黒と白

黒は、あらゆる可視光線を吸収し光を通さない不吉な色であり「死」「闇」「罪」などのイメージがある。

白は、あらゆる可視光線を反射し「清潔」「潔白」「純粋」などのイメージがある。

映画の導入部では、地下駐車場のカーブミラーに黒塗りの車。

そこに、黒いヘルメットを被った男が黒いバイクに乗って現れる。

車のサイドミラーには男の顔(週刊誌のスクープ記者)。

バイクの男はヘルメットを取り、建物の中に。

スクープ記者も建物の中に入ろうとした瞬間、全身黒ずくめの服装をしたヒットマン・今西が男を射殺したのだ。

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不吉な始まりである

御前 零児の身なりは、ハードボイルドの定番、トレンチコート、帽子、そしてサングラスと、すべて黒だった。
あとは、タバコを何げない顔をして口にくわえれば完璧である。

バー「y」のマスター・ポパイ(新崎人生)は、白のTシャツからバーの閉店を告知した後は黒のTシャツを着ていた。

敵のヒットマン・周(豊川悦司)は、全身黒ずくめの衣服である。

反対に白は、今西の恋人・福原(井上真央)が白衣の天使・看護師で白の制服。

そして「黒と白」以上のテーマはGUN SHOPのシャッターに貼られた紙だと思う。

LONG GOOD BYEと書かれている。

零児が、火のついていないタバコでアンダーラインを引いたのだ。

零児のワルとの別れは、週刊誌のスクープ記者、そして不動産投資詐欺師・守山(江口洋介)。

仕事仲間との別れは、GUN SHOPの社長(死亡)零児の担当編集者・児玉(佐藤浩一[定年退職])。

飲んだあとの別れが、元ミュージカル女優・光(桃井かおり)石田、市川(大楠道代)、そしてバー「y」のマスター・ポパイ(里のおふくろが年を越せそうもないので店を閉める)。

最大の別れは、ヒットマン・今西だと思う。

白衣の天使・井上が「闇」の黒を白で反射してしまった。

今西は銃を弾かないはず。

零児は執筆活動とも別れるのだろうか。

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いや「午前0時」に復活する

「別れは出会いのはじまり」と、いうではないか。

それでは、さよならサヨナラ。

追伸
「最高のオチは『一度も撃ってません』ということですね。特に豊川悦司には、笑ってしまいました。阪本監督と同意見ですと嬉しいのですが」

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監督  :阪本順治
脚本家 :丸山昇一
音楽  :安川午郎
出演者 :石橋蓮司/大楠道代/岸部一徳/桃井かおり/佐藤浩一/豊川悦司/妻夫木聡/新崎人生/井上真央/柄本明/柄本佑/前田亜季/渋川清彦/小野武彦
公開  :2020年7月3日
上映時間:100分