
「えッ、ほんとう?
主人公の牧眞人(マキ マヒト)は、監督の宮﨑駿がモデルというのだ。
美少年で11歳の小学生。
『紅の豚』のポルコとは、似てもにつかないけどね。
中年男で豚顔。
それだけじゃないんだ。
青サギは、プロデューサーの鈴木敏夫らしいんだ。
外見はカッコイイ青サギだが、ひと皮むくと中年ぶとりした、ただのサギ男。
しかし、下の世界で言い合う、二人の関係は実におもしろい。
こりゃー、本当かも?」
そんな眞人は、父・勝一(ショウイチ)と母(久子)の妹(夏子)が暮らす田舎へ。
なぜなら、入院中の母が病院の火事で亡くなったのだ。
そして、一年後とはいえ夏子のお腹には、なんと勝一の子供が……。
夏子は、勝一の再婚相手であり、眞人の継母なのだ。
さらに、夏子の屋敷に着くと屋根の鬼瓦では、意味深な青サギが出迎えてるではないか。
眞人の人生を大きく変える青サギとは、いざ知らず。
青サギは、下の世界からの使者だったのだ。
はたして眞人の運命は……。
原作・脚本・監督:宮﨑駿
音楽 : 久石譲
主題歌「地球儀」 : 米津玄師
公開日 : 2023/7/14
上映時間 : 124分
それでは、2024年「アカデミー長編アニメ映画賞」、「日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞」受賞と、日本のみなならず世界が認めた映画『君たちはどう生きるか』の名言を見てみよう。
美少年 眞人の名言 7選
❶ おまえはは何者だ。ただの青サギじゃないだろう
のぞき屋の青サギは、眞人の質問には答えず「どうやら、長いあいだ待ちつづけたお方があらわれたようだ」
そして「いざ母君(ハハギミ)のもとへご案内しましょうぞ」と言い放ったのだ。
青サギは、何とか下の世界へ眞人を連れて行こうとウソをついてるんだ。
どうする、眞人。
❷ 母さんが僕あてに残してくれたんだ
小説『君たちはどう生きるか』の表紙裏には、母さんの筆跡で「大きくなった眞人君に 母 昭和12年 秋」と記してあった。
この本を読んでからの眞人は変わったね。
他人行儀に接していた継母・夏子に対し、眞人は、自ずから
ナツコに近づいたのだ。
「母さん、夏子母さん」と。
『君たちはどう生きるか』の本は、感ずることがあったということだね。
偉大な力、読書!
❸ ワレヲ学ブ者ハ死ス
眞人が黄金の門を見上げた時に、目についた文字。
門の奥には大きな石舞台が。
ところで、映画の流れからしてワレ=悪意じゃないかな。
ワレ(悪意)ヲ学ぶ者ハ死ス。
石は悪意があると眞人も大叔父も認めているよね。
そして、悪意から抜け出そうと眞人は、自分が立派になり友達を作ると前進。
大叔父は悪意のない石を揃えたが、道なかばで叶わぬ夢となり消えたんだよね。
悪意はダメ、孤立を招くだけ。
❹ そのウソは本当か?
サギ男は、すかさず「オイラはウソをつかないぜ」と返答。
確かに青サギのときはウソをつくが、サギ男のときは何故かウソをつかない。
今回は、眞人が青サギの嘴(クチバシ)に穴を開けた件について「穴を開けた者が埋めないと効き目がないんです」とサギ男が強調。
サギ男が言うんだから、こりゃー、本当だね!
❺ 人間を食べるの!?
眞人の問いに対し青サギは「象だって食いますよ」と返答。
インコはペリカンと真逆で食べ過ぎ。
インコは体が大きくなりすぎ、下の世界の建物がパンク状態。
現実の世界と何処か似てる。
❻ それは木ではありません 墓と同じ石です 悪意があります

大叔父が「眞人、わたしの仕事をついでくれぬか」と積み木をさしだし「君は、積み木をどれかひとつ、足すことができる。君は世界をもっと穏(オダ)やかなものにすることができる……」に対しての返答。
アインシュタイン似の大叔父は、石の積み木で世界を支配していたのだ。
石の最大の武器は、原子爆弾だよね。
世界を破滅させる悪意の爆弾。
因みにアインシュタイン(Einstein)は、ドイツ語でein=1、stein=石(1つの石)。
実は、眞人も学校帰りにクラスの児童等とケンカをした後、悪意の行動をしてる。
石でガツーンと側頭部に一撃したのだ。
流血である。
父や母親をはじめ、お手伝いのおばあちゃんや学校の先生は、ケンカをした児童らが負傷させたと思うよね。
しかし、児童らは眞人を相手にしないはず。
なぜなら、眞人に流血の傷を負わせてないから。
眞人は悪意の経験後、『君たちはどう生きるか』を読んだり下の世界を経験したことにより、上記の名言が生まれたのでは。
いやぁーすごい、成長してる。
❼ 友達を見つけます ヒミやキリコさんや青サギのような
大叔父は、上記の言葉を受け「友達をつくるも良い。戻るもよい。とにかくこの石を積むのだ!時間がない!わたしの塔はもはや、ささえきれぬ」と、悪意のない石を目の前に、眞人に懇願したのだ。
そこに突如、登場したのがインコ大王。
あとはメチャクチャ、あっけない結末。
トホホホー。
二つの顔を持つ青サギの名言 3選
❶ おお!なんと美しい 力あふれる姿だろう
サギ男が嘴の穴をふさいだとたん、青サギに変身。
そして、上記の名言を。
おお!青サギがナルシストだったとは、お見事。
発言までも強気「オイラはお前の友達でも仲間でもないんだ」と。
大丈夫、もうすっかり友達だもんね。
❷ お前 あっちのこと覚えてるのか?
「よかった ペリカンたちは無事だったんだ」と眞人が発言したのに対し、サギ男が質問。
普通、下の世界のことは現実の世界に戻ると忘れるのだが、眞人は違った。
キリコからいただいたお守り・キリコ人形や使いきった悪意の石の一欠片(ヒトカケラ)、そして良き思い出を持ってきたのだ。
これからの眞人の人生で、忘れてはいけない経験がタップリ。
そんな眞人は、夏子母さんとすっかり意気投合(イキトウゴウ)し、手をつなぐ二人の姿は楽しそう。
やはり、あっちよりこっちの方がいいよね。
❸ あばよ友達
サギ男が青サギになり、眞人に頑張れよと言わんばかりのラストメッセージ。
眞人は、サギ男から友達とはどういうものかを学んだ気がする。
自己犠牲を厭(イト)わないサギ男。
大叔父の名言 3選
❶ おろかな鳥よ お前が案内者になるがよい
青サギが、夏子のところへ眞人を案内しなさいと、大叔父に言われた場面。
青サギは大叔父の使者のため、逆らうことは御法度(ゴハット)。
「行かなねぇほうがいいと思いますがねぇ」と思っても。
❷ ごらん これは悪意にそまっていない石だよ
眞人は13個の白い石を見つめ、そして側頭部の傷を指差しながら「この傷は自分でつけました。僕の悪意のしるしです。僕はその石にはさわれません」と返答。
悪意を理解した眞人だから言えたこと。
❸ ヒミ 眞人 時(トキ)の回廊(カイロウ)へ行け 自分の時代(トキ)に戻れ
大叔父が、積み木を眞人に委(ユダ)ねようとしてる所へ、インコ大王が現れ何もかもメッチャクチャ。
大叔父の最後の叫びなのだ。
危機一髪、ヒミ、眞人、サギ男。
若かりし眞人の母 ヒミの名言 3選
❶ お前まぬけだね インコにシチューにされるよ
オー、ヒミが助けに来なかったら、間違いなくシチューだったね。
インコが招いた場所は、大きなまな板の前だったのだ。
オー、くわばら、くわばら。
❷ 急いで食べな ジャムがたれるよ
宮﨑作品の定番、食事のシーンだね。
今回は食パンにバターをぬり、さらにジャムをたっぷりと。
眞人の口のまわりには、ジャムがべっとり。
美味しそう、笑顔、えがお。
❸ 素敵じゃないか 眞人を産(ウ)むなんて
ヒミは、眞人のお母さんになり、そして、病院の火事で死ぬと分かりながらも上記の名言を。
ヒミは眞人を世に送り出したいのだと思う、眞人自身が素敵だから。
確かに自己中心の眞人が、いつのまにか相手を思いやる少年に成長してる。
うーん、そうだね。
シャキシャキの性格 キリコの名言 3選
❶ この世界は死んでるやつのほうが多いんだ
下の世界を説明。
船や人間が見えるけれど実は、マボロシ。
死人と共存ということ。
ブルッ。
❷ お前が来た所さ 上で生まれるんだよ
眞人は、空に上っていく大群のワラワラを見て「みんなどこへ行くの?」と、キリコに質問したときの回答。
ワラワラは魚の臓物(ゾウモツ)食べ、熟すると上の世界に生き人間になるというのだ。
人間も海の生物が進化し、陸に上がったんだよね。
「猿が進化したのが人間でしょ。えっ、それは間違いです」
❸ お守りだ 持っていきな
もらったお守りは、なんと、おばあちゃん顔のキリコ人形。
そうそう、キリコおばあちゃんが吸っていたタバコの銘柄は「光」だったよね。
そりゃあー、縁起がいいワイ。
美人の母 夏子の名言 1選
❶ あなたなんか大きらい 出ていって!
眞人が下の世界の産屋で「一緒に帰りましょう」と夏子に言ったときの返答。
さらに、追い打ちをかけるかのように眞人に言った「帰りなさい、早く」は、ものすごい形相だった夏子が涙ぐんでる。
そして、眞人が「母さん帰ろう!」と、初めて「母さん」と呼んだ瞬間「眞人さん逃げて」に変化したのだ。
「逃げて」ということは、危ないということだよね。
産屋には、黄金の門にあった墓と同じ、石舞台が鎮座していたのだ。
夏子は、死を覚悟で下の世界に来たのでは。
そして、大叔父の後継者は産まれた子にしようと。
それにしても夏子もビックリしていたが、眞人がここまで改心したのは、『君たちはどう生きるか』を読んでからなんだよね。
眞人は、とにかく前に歩きだした。
継母の夏子さんではなく、お母さんとして歩みはじめたのだ。
空気の読めない父 勝一の名言 2選
❶ 眞人がインコになっちまった
名言だねー。
でも、お父さんの勘違いだからね。
お父さんは、偶然バケモノのインコと眞人が入れ替わった瞬間を見てしまったんだ。
それにしても、現実のインコは、かわいいね。
❷ おーい 眞人 行くぞー
戦争が終わって2年後、東京に戻ることになった日の朝、勝一が、玄関で2階の眞人に叫んだ言葉。
両となりでは、お母さんの夏子と眞人の弟が2階を見上げてる。
「はーい」と返事をする眞人。
家庭円満が伝わるワンシーンだよね。
牧家の再出発にパチ8ハ……。
あとがき
宮﨑駿監督は、吉野源三郎の著書『君たちはどう生きるか』を参考にしているように感じた。
特に「友達」や「悪」についてのテーマが共通だと感ずる。
小説の主人公コペル君は「自分はいい人間になって、いい人間を一人この世の中に生み出す」や「僕はすべての人が、おたがいよい友だちであるような、そういう世の中が来なければいけないと思います」と記している。
映画のストーリーは違うが、考え方は同じだと思う。
最後に一言。
東京を舞台にした『君たちはどう生きるか』を観たい……。
それでは、さよならサヨナラ