恐れ入谷の鬼子母神、魔女が宅急便とは。
糸井重里のキャッチコピー「おちこんだりもしたけれど、私はげんきです」が、すべてを物語っている。
私はげんきです、なぜ?
成長し自立したから。
もしかしたら…あなたかも。
13歳になった少女キキは、一人前の魔女になるため、よその町へ修行に出なければならなかった。
そんなキキが選んだ町は、今までの自然豊かな所とはうって変わり、海に囲まれた大都会である。
ところが希望に満ちたキキは、都会とのギャップにおちこんだりしながらも、少しずつ成長するというファンタジー。
監督は『崖の上のポニョ』や『となりのトトロ』そして『君たちはどう生きるか』の宮崎駿。
原作は角野栄子。
1935年1月1日生まれ。
ドキュメンタリー映画『カラフルな魔女〜角野栄子が生まれる暮らし〜』(2024年1月26日公開)。
2018年には、小さなノーベル賞と呼ばれている国際アンデルセン賞作家賞を受賞。
いよいよキキの修行が始まった。
それは人との出会いか。
おちこんだりもしたけれど成長の糧(カテ)にしたキキ。
最初の出会いは先輩の魔女だった。
先輩の魔女が「あの町が私の町なの名言1」と言った場所は、『赤い風車』のあるネオン街である。
映画にもなった、フランス・パリのキャバレー「ムーラン・ルージュ」ではないか。
先輩と別れた後すかさずジジが一言「ヤな感じ、あの猫見た?ベー名言2」と。
純真無垢のキキには、何やら嫌な予感?
しかし、キキにしか聞こえないジジの言葉があるから大丈夫。
子供が祖父のことを「ジジ」と言うのを聞いたことあるでしょ。
ジジは良き相談相手でもあり、見張り役でもあるということ。
しかし成長し独り立ちできるようになると、ジジのささやきは消えるんだ。
なのでキキが自立するまでは、心のささやきが重要だということ。
次の出会いは、キキが降りたった町の人たち。
人々は、せわしなく動きまわり、常に時間に追われているようす。
街路の人たちは、キキの挨拶などろくに聞いてもいない。
キキ、ショック。
さらにキキがおちこむことになる最大の危機が。
品のいい老婦人に頼まれたイワシパイを、孫娘に届けたときの場面。
キキが激しい雨の中、老婦人の思いも届くようにと運んだのに、孫娘は「だからいらないといったのよ名言3」とか、「私このパイキライなのよね名言4」である。
また、受領のサインをし終えると、すぐさま「バタッン」とドアを閉める素っ気ない態度。
「ありがとう」の言葉もない。
そこですかさずジジが「今の本当にあの人の孫?名言5」と。
キキの落ち込みが頂点に達したのだ。
パイだけでなく、キキが考えた宅急便の仕事まで否定されたのだ。
「これが現実の世界」と知るキキ。
今までは両親に守られ、何不自由なくすごし悩みがないのが、なやみという生活だった。
ところが、あまりのショックで魔法の力まで弱まり空を飛べなくなったのだ。
そんなキキにあるきっかけを与えたのが、ウルスラという少女の名言なんだけどね。
キキより少し年上の画家なんだ。
部屋には、シャガール風の絵がドーンと飾ってあったりする。
それにはペガサスと少女の横顔が。
作品は青森県八戸市湊中学校養護学級の共同制作という。
「それでは話が少し脱線しましたが、ウルスラの名言をドゥゾー」
- ウルスラ(名言6)
魔法も絵と似ているんだね
私もよく描けなくなるよ - キキ(名言7)
ほんと!? そういう時どうするの
私、前は何も考えなくてもとべたの
でも、今は分からなくなっちゃった - ウルスラ(名言8)
そういう時はジタバタするしかないよ
描いて描いて描きまくる - キキ(名言9)
でも、やっぱり飛べなかったら? - ウルスラ(名言10)
描くのをやめる
散歩をしたり景色を見たり…
昼寝をしたり、何もしない
そのうち急に描きたくなるんだよ - キキ(名言11)
なるかしら - ウルスラ(名言12)
なるさあ
ホラ横向いて - ウルスラ(名言13)
魔法って呪文を唱えるんじゃないんだ - キキ(名言14)
うん、血で飛ぶんだって - ウルスラ(名言15)
魔女の血か…そういうの好きよ
魔女の血、絵描きの血、パン職人の血
神様か誰かがくれた力なんだよね
おかげで苦労もするけどさ… - キキ(名言16)
魔法って何か、考えたこともなかった
修行なんて古くさい しきたりだって思ってた
キキはウルスラが急に描きたくなったように、絶対ぜったいゼッタイ飛びたくなったのだ。
「恋をしたキキ、トンボが絶体絶命のピンチ」。
キキはデッキブラシに全身全霊、願いを込め「飛べッ名言17」と言った瞬間、舞い上がったのだ。
キキが自立した瞬間である。
ジジに頼ることもなく自分の考えで行動し、飛行船にロープ一本でぶら下がっていたトンボを助けたのだ。
キキはもう町の人気者さ。
宮崎駿監督の『紅の豚』にも自立したカッコイイ人達がいたね。
ここに至るまでの道のりは長かったけれど、キキは良い人に巡り会えたおかげなんだ。
例えば一度聞いたら忘れない「グーチョキパン屋」のオソネさんと主人。
オソネさんは、キキにとってトンボとの仲をとりもったキューピッドなんだよね。
オソネさんが、キキに「必ず本人に渡してね!名言18」と念を押したコポリとは、トンボの本名だったんだ。
それからの二人は急接近、自転車で二人乗りをする仲に。
パンパカパーン、パパァパパァーン。
それからニシンパイの老婦人も、お世話になったキキに対し大人の応対をしている。
キキ本人を前にして老婦人は、
「それをキキという人に届けてほしいの。この前とってもお世話になったから。そのお礼なのよ。ついでにその子の誕生日を聞いてきてくれるとうれしいんだけど。またケーキを焼けるでしょう名言19」と。
キキの返答は、
「きっときっと、その子もおばさまの誕生日を知りたがるわ。プレゼントを考える楽しみができるから名言20」と。
老婦人は、
「ほんとね名言21」と返答。
相手の気持ちを理解し、大人の対応ができている。
普通13歳の少女は、トンボの友達のように、つるんで遊んでいるはず。
なのにキキは生活のために、宅急便で収入を得、自立している。
また、大人たちのさりげない行動からも学んでいたんだ。
キキの修行は、成功でしたね。
最初はジジと不安定な日々を過ごすも、人との出会いがキキを成長させた。
特に人生経験豊富な大人に教えられている。
またウルスラのように、ひとつのことを究(キワ)めた人からも同様。
さらにトンボや年下の人たちからも発想の豊かさを教わること、あり。
スランプに陥ったときは、キキを思い出そう!
「おちこんだりもしたけれど、私はげんきです名言22」。
それでは、さよならサヨナラ