岩戸鈴芽が、現世から常世へとつなぐ禁断の扉・後ろ戸を開けているではないか。
東北の震災で母を亡くした鈴芽(当時4歳)は、叔母の住む九州・宮崎へ移住することに。
その後、高校2年生に成長した鈴芽は、登校中に“閉じ師”(災いを引きおこす扉を閉じる人)宗像草太に声をかけられたのだ。
「このあたりに廃墟はない?名言1」「扉を探しているんだ名言2」と。
ところが扉を閉めるだけでは、災いを防げない場所が日本列島に2ケ所あり、その1ケ所の要石*を、鈴芽が抜いてしまったのだ。
「サータイヘン」
要石はダイジン(大神)という猫が役割を担っていたのだが、自由になったダイジンは鈴芽にベッタリ。
(C)2022「すずめの戸締まり」製作委員会
三角関係の始まりはじまり!?
「すずめやさしい、すき名言3」「おまえは、じゃま名言4」とダイジンが言い放った次の瞬間、草太を椅子に変えてしまったのだ。
(椅子は、母が鈴芽のために作ってくれた誕生日プレゼント)
それからの二人は、ダイジンを追いかけながら戸締まりをするというロードムービー。
要石* :
地震をしずめるといわれている神石、下記4ケ所に実在している。
・茨城県鹿島市 鹿島神宮
・千葉県香取市 香取神社
・三重県伊賀市 大村神社
・宮城県加美町 鹿島神社
監督は『君の名は。』『天気の子』の新海誠。
・1973年生まれ
・長野県南佐久郡小梅町出身
・中央大学文学部卒
現在は、ゲームソフト開発会社 日本ファルコムを経てアニメ制作会社コミックス・ウエーブ・フィルムに所属。
また、榎本正樹 著『新海誠の世界』によると、小学校のときからパソコンに携わり高校時代には、「パソコンで夕焼け空や朝焼け空をどう描くか夢中になったり、久石譲氏などの楽譜を買ってきて『魔女の宅急便』のメインテーマをFM音源でどう再現するかみたいなことをしていた」という。
つまりデジタルクリエイターとしての資質は、すでに開花しはじめていたということ。
その後の日本ファルコムでは、ゲームのオープニングムービーを担当していたという。
オープニングムービーとは、ゲームの開始前に登場人物や物語の内容そして世界観を短い演出動画にしたもの。
ゲームをプレイするユーザーにとっては、気分を盛りあげるために重要である。
結局、椅子に変えられた“閉じ師”宗像草太の運命は、鈴芽に助けを借りながら、家業を全うすることに。
鈴芽は草太と宮崎から愛媛、神戸そして東京へと扉を閉じながら移動。
そして最期、故郷・岩手へと。
それもそのはず、草太が東京で常世に行ったため、草太を助けるには故郷の“後ろ戸”*へ向かうしかなかったのだ。
宮崎
・1707年10月28日
・宝永地震 (M8.6)
愛媛
・1854年12月23日
・安政東海地震(M8.4)
・1854年12月24日
・ 安政南海地震(M8.4)
ちなみに東日本大震災は、(M9)、日本で最大。
“後ろ戸”* :
この世界(現世)と死の世界(常世)をつなぐ扉
鈴芽は、震災のときに迷いこんだ後ろ戸からでないと常世へ行けないため、草太を助けねばと岩手へ。
そんな鈴芽が岩手へと思った矢先に現れたのが、草太の友達・芹澤朋也である。
派手なオープンカーで御茶ノ水駅へ乗りつけたのだ。
かと思えば、叔母の岩戸環も鈴芽を宮崎に連れ戻そうとタイミングよく現れ、もう大騒ぎだッチュウノ。
特に芹澤のキャラは受けること間違いない、とにかく明るい。
「旅たちにはこの曲でしょう?名言5」とか言いながら、荒井由美の『ルージュの伝言』が流れてきた。
『魔女の宅急便』の映画でも、キキが”魔女の修行”に発ったとき、流れた曲が『ルージュの伝言』だった。
とにかくノリがいい。
「芹澤だけが、こんな調子で鈴芽の故郷・岩手へ向かったのでした。他は、難題をかかえ深ーい闇へ」。
ところで最後まで重要な存在だったのがダイジンだったのでは?
なぜなら、鈴芽の案内役だったのだから。
ダイジンを追っかけていたはずが、”後ろ戸”へ導かれていたということ。
それから草太の祖父・宗像羊郎が話しかけていた相手、黒猫のサダイジン(東京の要石だった)も重要。
次の羊郎の言葉が結末を物語っている。
「お久しゅうございますな…とうとう抜けてしまわれたか。あの娘についていかれますかな。よろしくお頼み申す名言6」と。
鈴芽が常世への扉を開けるため、サダイジン(左大神)は、ついて行くことに。
そして運転中の芹澤が突然、鈴芽に、
「猫ってさ、理由もなくついてこないでしょ?犬じゃないんだからさ。白と黒ってさ、よっぽど鈴芽ちゃんにしてほしいことでもあるんじゃねえの?名言7」と。
するとサダイジンが、
「そのとおり。ひとのてで、もとにもどして名言8」と、話しだしたのだ。
ついに鈴芽は常世に……子供のときに入った”後ろ戸”から。
震災があってからの鈴芽は、命に対する考えが、
「生きるか死ぬかなんてただの運だって、小さい頃からずっと思ってきた名言9」と。
ところが鈴芽は、扉を閉じつづけたことにより、命の大切さを知った。
また、「草太さんのいない世界が怖い名言10」とも言っている。
子供の頃の鈴芽は、母親からの愛情で守られていた。
また、草太も芹澤がいうように「あいつは自分の扱いが雑なんだよ名言11」と。
草太は閉じ師の関係上か、命に対しての考えがその場限りで、死は常に隣にあるという認識。
いつ亡くなってもいいという考えなのだ。
ところが、鈴芽と扉の戸締りを一緒に行動するにつれ、考えに変化が。
なぜなら、草太が要石になるときの叫びは、
「 消えたくない。
もっと生きたい。
生きていたい。
死ぬのが怖い。
生きたい。
生きたい。
生きたい。
もっと……名言12」
だった。
そして草太が常世で鈴芽に助けられてからも、
「いま一年、いま一日、いまもう一時だけでも私たちは永らえたい!猛き大大神よ!どうか、どうかー!お頼み申します!名言13 」とサダイジンにお願いしている。
つまり鈴芽と草太は、ダイジンとサダイジンに助けられ、生きる希望まで与えられたのだ。
たとえば、草太が要石から人間に戻るとき、鈴芽は私が要石になると言ったため、ダイジンは鈴芽のために要石になっている。
またサダイジンは、日不見の神・ミミズから鈴芽と草太を守るため、要石になった。
そして最後、サダイジンの望みどおり草太は、サダイジンの要石をミミズの頭に、鈴芽はダイジンの要石をミミズの尾にお返ししたのだ。
つまり、土地の守護神である産土に、災いを防ぐ要石を人の手で戻したということ。
命の大切さを経験した鈴芽と草太の運命は、お互い誰よりも必要な人となり、1分1秒でも長く生きつづけることだろう。
「ねえ君……好きな人はいるの?」
行ってきます!名言14
それでは、さよならサヨナラ。